室井佑月・作家
室井佑月・作家
この記事の写真をすべて見る

 作家・室井佑月氏は、「政府は、自分と仲間と、今のことしか考えていない」という。

【この記事の画像の続きはこちら】

*  *  *

 10月15日の毎日新聞デジタル版の記事によれば、

「岸田文雄首相は15日、『円安メリットを生かす海外展開を考えている中小企業、さまざまな企業、合わせて1万社を支援していく』と表明した」「歴史的水準にまで進んだ円安の長期化に備え、輸出促進などに取り組む企業を支援・育成していく考えとみられる」

 つまり、円安の長期化は止められない。だから、ピンチをチャンスに変えようってか。でも、具体的になにを輸出するの? 日本が世界の競争で勝てるものは、かなり減ってしまった。

 たとえば、EV(電気自動車)。日本は水素自動車にこだわるあまり、EVの開発に遅れた。

 ちょっと考えればわかりそうなものだけど、全国各地に水素ステーションを設置するのは、先進国ならできるかもしれないけれど、そうでない国の人々が水素を管理するのは難しすぎる。

 日本独自の水素自動車を輸出する余地は少ない。

 輸出支援の一方で、輸入品の値上がりはほったらかし。その典型が、ガソリン価格の高騰だ。円安が続くかぎり、輸入品の値段も上がり続ける。これは日本にとって厳しい事実だ。

 ガソリンが高騰したら、政府はその場しのぎの対策として、石油を輸入している会社に補助金を出した。でもこれも、根本的な問題解決にならない。

 水素自動車のことは一部の仲間のごり押しが生んだ結果だし、石油の輸入会社への補助金は、一部の政治家と一部の企業の利害関係をこれまでどおりつづけていきたいという思惑にしか見えない。

 水素自動車は、仲間以外の、それについて懐疑的な仲間でないものの声を聞かなかった。ガソリンが値上がりして困るのは日本で生きる全ての人なのに、こちらには税金で補助をしなかった。

 政府は、自分と仲間と、今のことしか考えていない。

 円安というのは、極端にいえば、日本が貧乏になるということだ。私たちの資産も目減りするということだ。

著者プロフィールを見る
室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

室井佑月の記事一覧はこちら
次のページ