僕は2012年のシリーズ1作目から参加させていただいたのですが、演出家の方の意向で舞台上のセットや特殊効果はほとんどなく、ハンドルと体だけで自転車レースを再現しなければいけませんでした。とても難しかったのですが、回を増すごとに先輩が後輩を支えて、キャストとスタッフも近い位置で意見交換できるようになっていって、すごく一体感のある座組ができていったんです。
途中でセットのアクシデントもあったのですが、全員が自分にできることを考えて解決していこうとする姿勢を見て、「『ショウ・マスト・ゴー・オン』はこういうことだよな」と痛感しました。無事に千秋楽を迎えられたときは、作中だけではなく、舞台裏も全部ひっくるめて、一つの総合レースを皆で走り切った充実感がありました。
そのとき感じた舞台の熱気は今も忘れていません。そんな作り手の熱量にお客さんを巻き込みたいと思いながら、いつも舞台に上がっています。
(ライター・澤田憲)
※AERA 2022年10月24日号