——舞台も映画も、スピード感のある殺陣のシーンは思わず息をのんだ。
鈴木:激しいだけじゃなくて、美しく見せること。そしてギリギリ感というか、「本当に斬られてしまうんじゃないか」というリアリティーをどうすれば出せるのか、いつも考えています。
立ち合いも、一つとして同じものはありません。相手が刀を構えたときに身構えるのか、構える前に相手の体勢を見て先手を打つのか、それとも既に刀が振り下ろされた状態でリアクションを取るのか。まさしく、そういう“瞬間”にドラマが生まれると思うんです。映像にしたらコンマ何秒の世界ですけれど。
■殺陣はクセになる
でも、不思議なことに、現実世界では一瞬の出来事でも、頭の中ではとても冷静に次の行動を考えているんです。次はこう来るからこっちにかわそうとか。もちろん、アクションに関しては事前に演技指導を受けていて、相手と動きを擦り合わせたうえで撮影に臨んでいます。けれども、ただ型通りに動けばいいというわけでもありません。ワンテンポ速く動くか、遅く動くかで、映像で見たときに立ち回りのスピード感や緊張感が大きく変わってくる。そういうところが殺陣の魅力だし、クセになる部分がありますね。「ギリギリよけられた!」みたいな(笑)。
——これまで、漫画やゲームなどの2次元作品を原案とした「2.5次元ミュージカル」を牽引する俳優として、数多くの舞台に出演してきた。
鈴木:2.5次元には普通の演劇にはない特殊な部分はあると思います。僕が演じることで、お客さんが作品に対して抱いているイメージを壊してはいけない。もちろん、作中の動きやせりふをそっくりトレースするだけでは舞台として成立しません。でも、裏切りすぎてしまうと、2.5次元である意味がなくなってしまう。なので、原作の漫画やアニメを鑑賞して、自分なりに作品や登場人物の理解を深めてから演じるようにしています。
プレッシャーは感じます。人気作品ほど、ファンの皆さんの思い入れも強いですから。でも、それを超えていかないと、舞台という異なるジャンルで心を打つのは難しい。
おかげさまで、「最遊記歌劇伝」「弱虫ペダル」「刀剣乱舞」シリーズなど、5~10年以上にわたって愛される作品も増えてきました。ただ、シリーズ作品ならではの難しさもあります。漫画で言うと、時には「5巻から10巻までの内容を1作品にする」という描き方をしているので、次の舞台につなげるためには、演者も演出もどんどんパワーアップしていかないといけません。