どう演じれば納得してもらえるのか、なかなか糸口が見つからず、苦しんだときもありました。特に俳優になったばかりの頃は、演じ方を考える材料が少な過ぎました。「どうやらバックボーンというものを作らないといけないらしいぞ」と聞いて、自分が演じる人物の過去をあれこれ想像したりもしましたね。それが演技に生きたかというと、生きていない気がしますが(笑)。でも、そうやって、伝わらない部分まで頑張って作ろうとする生真面目さが、今思えばよかったのかなと思います。
それから、歌もダンスも、とにかく練習すること。練習に費やした時間の多さが自信につながった部分はあります。それに舞台は、1回で終わらず、何回も本番を演じることができるんです。これがすごく大きくて、観客の前で演じるからこそつかめるもの、開花する部分は絶対あると思います。シリーズ作品であればなおさら、回を重ねるごとに役への理解が深まりますし、技術的な部分も上がっていきます。お客さんと一緒にリアルタイムで成長していける喜びが、舞台俳優を続けていく大きなモチベーションにもなっていますね。
——今年でデビュー15周年。最近は座長として、共演者やスタッフをまとめる機会も増えた。
■愛してもらうために
鈴木:ずっと愛してもらえる作品になるためには、第1弾や第2弾でしっかりとした地盤を作ることが大切だと思っています。作品を通じて「こんな舞台を届けていきますよ」という方向性をお客さんに伝えていかないといけません。
だから、表からは見えない部分ではありますが、「座組作り」はとても大切なんです。キャストやスタッフと密に連携が取れているかどうか。「次、こういうことやりたいよね」と遠慮なく話せる環境じゃないと、シリーズ作品はなかなかうまくいかないと思います。
そういうことを考えるうえで、僕の中で大きなターニングポイントになったのが、最後に出演させていただいた「弱虫ペダル」の舞台(インターハイ篇 The WINNER)でした。自転車レースを題材にした漫画が原作で、この作品に参加できたことはすごく大きかった。