「これはエネルギーの民主化です」とはソーラーシェアリング発案者、長島彬さんの言葉。「コミュニティ分の発電所を分かち合う。電力会社や経産省の言うがままになっていた時代がまもなく終わろうとしているんです」
彼らの取り組みに、井上ひさしの長編『吉里吉里人』を思い出した。
東北のある村が日本政府に愛想を尽かして「吉里吉里国」として独立を果たし、エネルギーや食糧の自給自足で存続を図っていくストーリー。小説にはこんな表現がある。「<農政栄えて農業滅ぶ>という日本農政にたいする百姓たちの異議申し立て」……。
映画のラストで、若手農業者のリーダー近藤さんはアフガンで凶弾に倒れたペシャワール会現地代表中村哲さんが遺(のこ)した言葉を挙げた。
「この世の中は絶望の世の中ではなくて、希望の世の中。僕はこの中村さんの言葉を表現したいんです」
『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』でメガホンをとった小原浩靖さんは主題歌の作詞、宣伝配給も手掛けている。
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞。新刊「松本隆 言葉の教室」(マガジンハウス)が好評発売中
※週刊朝日 2022年10月14・21日合併号