TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。「『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』」について。
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「被告は、大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」(2014年5月21日 福井地方裁判所)
古賀茂明さんのコラム『政官財の罪と罰』(本誌9月9日号)を読んで、ドキュメンタリー映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』(小原浩靖監督)を観た。主人公は樋口英明元福井地裁裁判長。彼の判決文に原理原則に則(のっと)った太い幹の印象を持った。
樋口さんにお会いしたのは今年1月、吉祥寺の武蔵野公会堂で開かれた小室等さん、坂田明さん、谷川賢作さんら出演の福島復興チャリティーイベントだった。樋口さんは会場にカバンひとつで現れた。裁判官を定年退官後、原発の危険性を伝えるために全国を行脚している。
三重県に生まれ、京大法学部を卒業、司法修習は第35期修了。柔らかな関西弁を話し、眼差(まなざ)しは柔らかいが、判決文はそれとは真逆、権力の横暴を許さない激烈なものだった。
「原子力発電所でひとたび深刻な事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」
岸田政権が既存原発の更なる運転延長と新原発建設検討を宣言した時期に、今度はスクリーンの樋口さんと再会したのだが、彼は「裁判官として一番大切なことは?」と問われ、「それは独立の気概です。気概さえあれば、なんとかなるものです」と答えていた。
このドキュメンタリーにはもう一つ、東日本大震災の放射能汚染で一度は農業を諦めた近藤恵(けい)さんら福島の農業従事者が登場する。
彼らがトライするのが太陽光をみんなで分かち合う「ソーラーシェアリング」。作物を育てながら太陽光発電システムを組み上げ、「311で深くダメージを受けた僕ら農業者が自分たちの手でエネルギーを作り出す試み。『あそこの畑でつくった電気だ』と地元の方に思ってもらえれば」と若手が微笑(ほほえ)む。