「ずっとヒラヒラした可愛いスカートに憧れていました。でも口に出せませんし、周囲も許すような状況ではありませんでした」
厳しい中学受験を経て進学したのは、名門進学校の「函館ラ・サール」。
「隠していたとはいえ、トランスジェンダーなのに全寮制・男子一貫校。中学生は1室50人の大部屋ってのが笑えるでしょ(笑)。さすがに高校進学時に許可を得て校外に下宿しましたけどね」。
大学は、臨床心理学を学ぶため都内三鷹市のルーテル学院大学へ。そこで生涯の伴侶とも出会い、心のケアもできるメイクアップアーティストを目指して卒業後は東京・六本木にあるハリウッド美容学校に進学した。
さらに将来の起業を視野に入れ、並行して姉妹校のハリウッド大学大学院でビューティービジネスを学び、16年にビューティービジネス修士の学位を取得して卒業。フリーで活躍後、今年2月、サロンをオープンした。
「戸籍上は現在も男性で、20年2月にパートナーと結婚しました。式では、もちろん私もウェディングドレス。式場のホテルオークラ東京ベイは初めてのことだったらしく、ホテルをあげてサポートしてくださいました。LGBTQへの関心の高さを実感しましたね」
審査員を務めた名古屋市の有名ドレスショップ「The Dress Vogue」の平岡勇治代表は、コンテストの人気についてこう説明する。
「かつて女性は結婚してしまうと、育児に専念し家庭を守るものという固定観念があり、共稼ぎの時代になっても自分のことは我慢させられがちでした。でも今は、『いかに人生を楽しみ、自分を輝かせられるか?』を考える女性が増えてきたからではないでしょうか? ミセスコンにエントリーするのも自分磨きの一つであり、自己表現、ブランディングなんですよ」
さまざまな思いが交錯するミセス・オブ・ザ・イヤー。来年2月には世界大会を予定している。
なお、結果は、村山さんがレジェンド部門の準グランプリに選ばれ、世界大会出場が決定。白羽さんは、ブリリアント部門・SDGs賞を受賞した。
(高鍬真之)
※週刊朝日オリジナル記事