タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
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英国のエリザベス女王死去の第一報から、しばらくはBBCの報道を見ていました。その中で、ある識者の発言が印象に残りました。概要は「エリザベス女王が25歳で即位した1952年当時は、英国社会の主要な地位は男性が占めていた。女性は男性の補助的な存在で、家庭で育児を担うべきとされていた。若き女性君主の姿は多くの人々に新鮮に受け止められ、女性たちを励ますロールモデルとなった」というものでした。それが完全に過去の話として語られていることに今更ながら愕然(がくぜん)としました。ジェンダー格差は世界共通の課題ですが、他国と比べて日本は極めて変化が遅いことが顕著です。男女平等の達成度を示す2022年の世界経済フォーラムグローバルジェンダーギャップ指数のランキングで英国は146カ国中22位、日本は116位。日本は主要先進国で最下位、ASEAN諸国や周辺国よりも低い順位です。22年現在の日本ではまだ「男は主・女は従、男は仕事・女は家事」という性別役割の伝統が残る地域も多く、皇位は男系男子しか継承できないなど男尊女卑の風習が残っています。主要な地位を占める人々の大多数は男性で、女性閣僚は現在わずか2人。女性首相も誕生していません。エリザベス女王が死の2日前に任命したリズ・トラス新首相は英国史上3人目の女性首相で、女性であることよりも経済政策などに注目が集まっています。日本はここ20年で「ウーマノミクス」「女性活躍」を謳(うた)い経済政策として女性の雇用を後押ししたものの、増えたのは低所得の非正規雇用で、女性が経済的・社会的自立を果たせるような働き方は推進されませんでした。
たまたまほぼ時を同じくして「国葬」が行われることになった日英両国をジェンダー平等の観点で見ると、この70年の歩みの違いを思わずにはいられません。
※AERA 2022年9月26日号