安倍晋三元首相銃撃事件を起こした山上徹也容疑者の伯父が本誌の取材に応じた。母親はなぜ旧統一教会へ高額献金するほど、教団にはまってしまったのか。AERA 2022年9月26日号の記事を紹介する。(全3回の1回目)
【グラフ】1987年からの旧統一教会による被害の相談件数と被害額の推移
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「物静かで賢く美しい人でした」
安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者=殺人容疑で送検、鑑定留置中=の母親の若い頃を知る人は、そう教えてくれた。
母親は、宗教法人「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に1億円以上の献金をして自己破産している。それが山上容疑者の事件を起こした動機とされる。母親はなぜ、そこまで教団にはまってしまったのか。
母親は3人きょうだいの長女として生まれ、奈良県立の進学高から大阪市内の有名大学に進んだ。卒業後は神戸市内の小学校で栄養士として勤務し、数年後に実父が創業した奈良市内の建設会社に入社した。知人の勧めでお見合いをしたところ、一目ぼれされて結婚したという。それが、山上容疑者の父親だ。
父親は京都大学工学部を卒業し、ゼネコンで働いていた。結婚後は跡継ぎとして、建設会社に入社。役員になり、トンネル掘削業務にあたったという。だが、1984年12月に37歳で自殺してしまう。結婚からわずか5年ほどだった。
■「亡くなる前にうつ病」
当時、長男は5歳、次男の山上容疑者は4歳。母親のおなかには、3人目の子どもとなる長女がいたという。父親の実兄で山上容疑者の伯父(77)は、
「仕事が本当にきつかったようです。山奥の飯場で寝泊まりすることも多く、酒量も増えていた。亡くなる前はうつ病になり通院していた。私にとって唯一の兄弟ですから、大泣きしました。女手一つで育ててくれた母も大きなショックを受けていた」
と言って、言葉を詰まらせた。
夫を失った山上容疑者の母親は、幼い子どもたちとともに、それまで住んでいた大阪府内の自宅から奈良市内の実家へ引っ越しをした。建設会社の取締役となって収入は得ていたものの、頼りたい実母はすでに他界していて、ひとりで子育てをすることに。さらに病気がちの長男は大きな手術を繰り返し、10歳の頃には片目を失明してしまう。