母親がどのように教団と最初の接点を持ったのかは、よくわかっていない。旧統一教会を長年取材してきたジャーナリストの鈴木エイト氏はこう指摘する。

「教団には昔から篤志家を狙うグループがあった。山上容疑者の母親はそのターゲットにされたのでしょう」

 教団のターゲットへのアプローチは執拗(しつよう)だ。関東在住の元宗教2世の20代女性がかつて両親とともに通った教会のホワイトボードには、新たに信徒になってくれそうな人の名前がびっしり書かれていたという。いつも礼拝の最後には、その名前を1人ずつ読み上げて、「では皆さん、祈祷(きとう)してください!」の掛け声とともに、

「○○○○さん! ○○○○さん! ○○○○さん! 勝利します! 勝利します! 勝利します!」

 と大勢の信者が泣きながら、一斉に叫ぶのだという。女性は、

「声が響いて、異様な雰囲気でした。自分たち信者の信仰が足りないせいで、メシア(教団の創始者、故・文鮮明氏)に重りを背負わせてしまって本当に申し訳ありません、と涙を流す。『必ず伝道してお返しします』というのが信者の目標でした」

(編集部・古田真梨子)

AERA 2022年9月26日号より抜粋

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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