
本誌で「てれてれテレビ」を連載するカトリーヌあやこさんは、朝ドラは「家族と地方性、主人公の仕事、恋愛」の3本柱でできていると言う。
「3本柱がうまくかみ合うと良い朝ドラになりますし、どれか1本でもしっかりしていれば何とかなる。たとえば『おかえりモネ』は、ストーリーが微妙でもヒロインの恋人になる医師の菅波先生が好評で『俺たちの菅波』なんてフレーズができるほど愛されました」
ところが、「ちむどんどん」は、3本柱が全部ぐらぐらしていたという。
「『ニーニー』こと兄の賢秀は詐欺、暴れる、借金の無限ループで、しかも仲間由紀恵が演じるお母さんがそれを毎回受け入れてしまうのでモヤッとする。仕事では、暢子は学びや努力をすっ飛ばして成功してしまう。フォンターナという一流イタリアンレストランで修業したのに、なぜ沖縄料理屋で独立するの?と(笑)」(カトリーヌさん)
恋愛も、のちに暢子と結婚する和彦が、婚約者の愛に「全部なかったことにしてくれ」と言い放ったことで、多くの視聴者に衝撃を与えた。
「略奪のような形になってしまいましたからね。飯豊まりえさんが愛ちゃんをすごく素敵に演じていたので、余計に暢子と和彦に好感が持たれなくなってしまいました」(同)
9月30日の最終回に向け、このままのペースで行ってしまうのか。
「度を越えたダメっぷりで視聴者の怒りを買ったニーニーが、最後に改心するのか。ただ、それはそれで安直。この家族と半年付き合って良かった、と思わせてほしいんですが……」(碓井さん)
■朝ドラ史に爪痕 ある意味記念碑
ただ、希望がないわけではない。前述のようにSNS上では「#ちむどんどん反省会」の名のもとに毎朝、多くの熱い議論(ツッコミ?)が交わされているわけで、注目度は高いとも言える。悪名は無名に勝る、という考え方もある。
「不評の割に視聴率が下がらなかったのは、視聴から脱落する人が一定数いる一方、SNSでバズっているのを知り、『反省会って何?』と怖いもの見たさで見始めた人がいたこともあるでしょう。また、コロナと相次ぐ値上げで人々がむしゃくしゃする中、SNSに書き込んだり、反省会の投稿を読んでストレスを発散したりするための格好の『ヒール(悪役)ネタ』となった面もあると思います」(西川氏)