アメリカ人の妻をやっていると、わりと頻繁にこんな質問を受けます。
「料理はどうしてるの? 大変じゃない?」
確かに苦労はあります。違う食文化のもとで生まれ育ったアメリカ人と日本人が、日々ひとつの食卓を囲むのですから。たとえばうちの夫は醤油をぐつぐつ煮詰める匂いが苦手なので、我が家の食卓に煮魚やおひたしが上がることは滅多にありません。それ以外の和食、たとえば焼きそばとか鮭のホイル焼きとか豚の生姜焼きといった料理は、嫌いではないけれど食べるのにエネルギーがいるそうで、和食が2日も続くと明らかに元気をなくします。また夫の体内にはピザからしか栄養を吸収できない第二の腸があり、2週間に1回はピザを摂取しないとこれまた元気がなくなります。
さらに厄介なのは、食べる量。それも肉を。1食あたり肉を1ポンド(約450g)は食べないと胃と気がすまない。昼食にステーキ、夕食はローストチキン、と1日約1キロの塊肉を切ったり焼いたりしていると、タンパク源は卵や豆で十分派の私のほうが元気がなくなっていきます。食事作りは私専任ではなく3回に1回は夫が作るのですが、自分が作るのでなくても、冷蔵庫に積み上がる生肉のパッケージを見ているだけで生気が吸い取られていくような気がします。
それでも、国際結婚夫婦の食事作りは大変だというつもりはありません。食事作りの苦労は、別のところにあると思うからです。
ある時、日々の肉料理があまりにしんどくて、アメリカ人のママ友だちが集まる場で愚痴をこぼしたことがあります。国際結婚夫婦の食事作りは大変だ、というつもりでした。あなたたちアメリカ人、お肉食べ過ぎじゃない? と茶化す気持ちもちょっぴりありました。ところが意に反して、私の愚痴はその場の同意をすごい勢いで集めてしまったのです。「わかるー! うちの夫もなんでっていうくらい食べる!」「夫だけ食費がすごいのよ!」「リモートワークで毎日家にいるから、昼食作るのがめんどくさいったら!」と、出るわ出るわ、愚痴のフルコース。