気がつけばこれまでに通い詰めた田んぼは300カ所を超えた。おかげで米だけでなく、田んぼの目利きもできるようになった。

「二つ並んだ田んぼでも、どれだけ手をかけたかでできる米の味は全然違う。それほど米は正直で繊細なんです」

 説得力を持たせるために、「5ツ星お米マイスター」や「ごはんソムリエ」といった資格も取得。消費者目線でありたいと、店頭に並んだ米には「冷めてもおいしい」「粘りが強い」などと特徴を書き添えている。

「味と値段が合っていれば、米は売れる」が持論だ。日本人が米を食べなくなったと言われて久しいが、一杯でも多く食べてもらえるために何をすべきか、いつも頭をフル回転させている。

 真面目に米を作り続ける農家の頑張りを客に知ってもらおうと、米ができるまでのストーリーを聞き取り、販売する際のヒントにする。

 コロナ禍の外食需要減で余った業務用の食材などを販売するサイトも立ち上げた。

「農家の方が努力して作っている米が、少しでも無駄になるのが許せないんです」

 これからも一粒一粒に愛を注ぎ続ける。

(ライター・浴野朝香)

AERA 2022年9月12日号

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