東京都市大学のキャンパス(撮影:松岡瑛理)
東京都市大学のキャンパス(撮影:松岡瑛理)

 時代に合わせて、進化を遂げる大学の学部・学科名。独自性ある名称は、いつ頃から増えてきたのか。大学ジャーナリストの石渡嶺司さんが解説する。

「きっかけとなったのは、1991年に行われた大学設置基準の大綱化です。学部・学科の設置基準が改正され、学部名称がある程度自由に決められるようになりました。91年には芝浦工業大でシステム工学部(現システム理工学部)が開設され、以降、他大学でもカタカナ語を冠する学部・学科が増えていきます」

 聞き慣れない単語を含んだ学部・学科名は、学ぶ内容が想像しづらい場合もある。にも関わらず、カタカナの名称を大学が積極的に取り入れるのはなぜか。

 今回取材を行った大学には、意図をもった「積極的」パターンと、「やむを得ず」パターンの二通りがあった。

 前者の場合、理由は大学により異なる。一つが「受験者層の拡大のため」というものだ。東京都市大の関教授は、「デザイン・データ科学部」を新設した背景の一つに「文系女性の受験者を増やす」という狙いがあると話す。

「デザイン・データ科学部が設置される横浜キャンパスは2013年に2学部4学科体制となり、大学全体で見ても比較的女子学生が多い。開設当初の文理融合の理念や方向性を踏襲しながらも、その発展形を目指したいと思っています」

 このような戦略について、ベネッセホールディングスの広告代理店である進研アドの担当者は「大学経営という観点から見ればきわめて自然なこと」と評価する。

「例えば文系学部である『経済学部』でも、データサイエンス教育を導入することで、理系進学を考える受験生を増やせる可能性があります。こういったマーケティング効果を見込んで、時代に合った学問分野を取り入れていくというのは、特に私大の経営にとって必要なことです」

 ほかに、「他大学との差別化」という理由も挙げられた。立教大の沼澤教授は、スポーツウエルネス学部の名称を決めるにあたり「他大学で多い『スポーツ』と『健康』、『科学』との組み合わせではなく、『ウエルネス』という言葉を打ち出しました」と話す。

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国の施策の「カタカナ化」も影響か