地上波で中継なし

 そして最大の懸念が、ライト層のさらなるサッカー離れだ。

 W杯初出場を決めた「ジョホールバルの歓喜」(97年)や、02年日韓W杯の盛り上がりを覚えている人は多いだろう。それ以降も、W杯本大会はもちろん、アジア最終予選やアジアカップなどの折に代表人気は高まった。だが、いまその熱はない。マクロミルと三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行う「スポーツマーケティング基礎調査」によると、「サッカー日本代表ファン」は11年に4717万人いたが、21年には2180万人と半数以下に落ち込んでいる。

 一方、それと逆行するように放映権料は高騰している。カタール大会のアジア最終予選は、ホームゲームこそテレビ朝日が地上波で中継したものの、高視聴率が見込みづらいアウェー戦は手を出せず、有料動画配信サービスのみでの放送になった。日本代表が本大会出場を決めた試合(写真)も地上波で中継されていない。福田さんは続ける。

「Jリーグも似たような状況で、サッカー中継は既に限られたコアなファンのためのものになりつつあります。W杯出場チーム数の増加でアジア予選の魅力が失われれば、日本代表の試合を地上波で見られる機会はさらに少なくなるでしょう。ライトなファン層のサッカー離れがより進みかねない。テレビで代表の活躍を見てサッカーを志す子どもたちが減ると裾野がしぼみ、日本代表の弱体化にもつながってしまいます」

 日本にとって懸案だらけのW杯改革。代表のレベルと魅力をどう維持し、高めていくか。

「まずは目前に迫ったW杯カタール大会で、日本中が盛り上がるような戦いを見せてほしい。ドイツ、スペインと同組になった日本がグループステージを勝ち抜けば、世界的なニュースです。子どもたちにも日本代表はできるんだと思える試合を見せることができれば、それが次の大会やその次の大会にもつながっていくはずです」(福田さん)

(編集部・川口穣)

AERA 2022年9月12日号

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