お菓子だけに興味が持てる女の子が渡仏し、憧れていた男性のお父さんと一緒に本物のフランス菓子作りに奮闘するんですけど、女の子の立場が悲しいの。憧れの男性は再会する前に亡くなっているし、お菓子コンクールでアイデアを優勝者に盗まれるし。特別賞はもらえるけど、不正は正されないんです。女性なら現実でいっぱい体験するような話です。
よしなが:それより後の作品の『11人いる!』になると、変わってきますよね。王様がいる、血でつなぐような君主制の国は男女差別が残っていて、民主主義の国連会議は議席の半分が女性。宇宙大学国の標語も「自由・調和・博愛」で、受験資格に年齢や人種の差別はありません。萩尾先生は「未来は絶対にそうなっているはず」と思っているんだなぁと感じました。
福田:登場人物のフロルが両性体で、性別を選べる設定なのも衝撃でした。
よしなが:萩尾先生が今も進行形で傑作を描き続けていらっしゃるのは、すごいです。
福田:『ポーの一族』が再開したのは、宝塚の舞台の影響が大きいと思っているんです。
■青池先生の作品 先進性がすごい
よしなが:素敵な舞台でした。少女マンガと宝塚は相性がいいですよね。青池保子先生の『エロイカより愛をこめて』も舞台化してほしいです。
私が『エロイカ』のスピンオフ作品『Z』を選んだのは、「リーマンBL」に近いと思ったから。ネクタイを締めた大勢のスーツ姿の男性がNATOで働き、たまにエロい話が混じったりします。
スーツのなかに肉体がきちんと描かれていることを私は勝手に「身が詰まってる」と呼んでいるんですけど、青池先生が描く男性はまさにそれ。『エロイカ』より前の『イブの息子たち』も主人公の2人はゲイと公言している上に、恋愛の相手は成人男性。先進性がすごい。
福田:胸毛が生えている男性が出てきても、お話がおもしろいし、笑えるし、画力が素晴らしいから格好いいんですよね。
よしなが:『エロイカ』で人気キャラの少佐は、30歳過ぎておかっぱのロングヘア。普通に考えれば変な髪形なのに、すべてが格好いい!