百花繚乱の少女マンガ。70~80年代の萌芽期を中心に、少女マンガ読みの達人お三方にジェンダーフリーの視点を交えつつ放談していただいた。語っていただいたのは、漫画家のよしながふみさん、少女漫画研究家の小田真琴さん、菓子研究家の福田里香さんと少女マンガに詳しい三人。話は時空を超えて多彩な方向に。懐かしくて新しい綺羅星のような名作を今こそ読み返したい!
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よしなが:ジェンダー視点を交えて5作品を選ぶ前提だったのに、私、すっかり忘れて、夏だから怖い話がいいよねって、『黒百合の系図』を加えてしまいました。
小田:僕の『見晴らしガ丘にて』も少女マンガから外れてます。でも、ジェンダー視点で考えると入れたかったんです。
福田:私も8作品からなんとか絞って、この5作。
よしなが:ルール破りのリストになっちゃいましたね(笑)。でも、少女マンガはどの作品に触れても、ジェンダーやフェミニズムが関わりますから。
福田:今日、私が真っ先に話したいのは、復刻もされず、忘れられている作品もたくさんあることです。少女マンガの読者第1世代は私より上の70歳代の人たち。お見合いで結婚するんじゃなくて、まずは恋愛しようよっていう先駆けの世代です。
小田:恋愛自体が新しい体験で、上の世代への反発になったんですよね。
福田:そう。その頃の少女マンガは読者の疑問に答えながら、人を好きになるのはこういうことだよ、失恋ってこういうことだよっていう恋愛のお手本になっていたと思うんです。今、読むと、たわいのない話に思えるかもしれないけど、少女の気持ちに寄り添って、大事なことを教えてくれていたんです。
小田:そこに新しい流れとして、萩尾望都先生や竹宮惠子先生、山岸凉子先生らがSFや歴史もの、少年愛に果敢に挑戦し、少女マンガを豊かにしていきました。
福田:萩尾先生の『ケーキ ケーキ ケーキ』はリアルタイムで読んで、びっくりしました。フランスの製菓コンクールで優勝した男性のニュースがヒントになってできた作品らしいんです。