西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、DeNAの山崎康晃選手が今シーズン、通算200セーブを達成できた理由を分析する。
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クローザーという仕事の適性をよく聞かれる。三振を取れる球があるのは絶対に必要な条件だが、それを生かすための球威というものも欠かせない要素となる。集中力が極限まで高まった打者の振りはコンパクトになり、ボール球に手を出してくれない。逆に早いカウントでは、ある程度球種を絞ってくる。八回までとは違うアプローチをしてくる。だから、クローザーという仕事は重たい。
DeNAの山崎康晃が8月24日の阪神戦で今季30セーブ目を挙げ、史上8人目の通算200セーブを達成した。29歳10カ月での到達は「大魔神」と呼ばれた佐々木主浩(当時横浜)の30歳6カ月を抜く最年少記録だ。
中畑清監督時代の入団1年目からクローザーを務めてきた。2015年は新人最多記録となる37セーブを挙げたが、20年は6セーブ、昨年は1セーブに終わった。年々、ストレートの威力が衰え、ツーシームに頼った配球が目立った。だが1球種で抑えられるほど甘くはない。しかも、相手からすれば負けている僅差(きんさ)の試合で必ず出てくるのがクローザー。先発投手同様、対策は立ててくる。
その中で毎年のように成績を残すには、直球の球威復活が必須だった。今年を見てみると、直球の被打率は昨年の2割6分から、今年は1割7分5厘まで下がっている。球威で押し込んでファウルでカウントを稼げるようになった。打者は差し込まれまいと、早めに始動するようになる。そうなれば変化球の威力は増す。クローザーが衰える時というのは、速球の威力、質が落ちるものだが、山崎は30歳手前にして、ようやく原点に戻ることができたといえよう。
優勝争いも面白くなった。7月4日時点でDeNAはヤクルトに17.5ゲーム差をつけられていたが、今は5ゲーム以内。9月の戦いはまったくわからなくなった。