さらに続けて、
「ソバーキュリアスの考えは欧米から来ている、いわゆるローコンテクストで、ロジカルに物事を捉えている人たちの間で広がっているように思います」
浅部さんは、ここ20年は世界を“ロジカルシンキング”が席巻し、論理で勝負する世になっていると説明する。効率と論理を重視し無駄をなくす。ソバーキュリアスはその流れに合致すると分析した。
「ただ、ロジカルだけでは限界が見え始めて、見直されているようですけどね。エモーショナルな部分もやはり必要だということでしょうね」と浅部さん。
■お酒への反応は人それぞれ違う
日本の飲みニケーション文化はロジカルではない、全く逆の世界である。日本人はお酒を使ったコミュニケーションを昔から続けてきた。そこにはメリットがあったから今まで続いてきたともいえる。
「お酒を飲むことに意味がないかといえば、そんなことはないと思いますし、お酒を飲むことで抑制が取れ、その人の本当の姿を見ることもできますしね。お酒のメリットもあると思います」
と浅部さんはお酒好きの一面をのぞかせる。
浅部さんのお話を聞いて、ソバーキュリアスなんてやめてしまおうかと一瞬、心が揺らぐ。
「どちらがいいとか、悪いとかではなく、一長一短あるということです」
これからソバーキュリアスを始めたいと考えている人に対して、どんな注意点があるのか。
「いつもお酒を飲んでいて、やめた際に落ち着かないとか、イライラするという場合、その状況は禁断症状が出ていて、アルコールの依存症の可能性があります。そういう人はお酒はやめたほうがいいですね。ただ、お酒を急にやめて不眠やうつの症状が出ると困るので、精神的な不調がある場合は医師などの専門家に相談したほうがいいですね」
と医師の立場としてアドバイスする。
ソバーキュリアスなど、お酒をやめて調子がよくなる人がいるのは間違いない。ただし、お酒の反応は人によって異なる。ソバーキュリアスを始めると必ず体調がよくなるはずだと、過剰に期待しないことが大切だとも強調する。
「調子がよくなる人はもちろんいますが、必ずしもそうなるとは限りません」
その上で浅部さんはお酒についての相談を受けた際には、それぞれの生き方を尊重しつつ、健康へのアドバイスをするのが医者の役割だと考えているそうだ。
最後にこう話してくれた。
「お酒をやめる、やめないは個人の考えで、人に言われることではないですね。大きな話かもしれませんが、ソバーキュリアスをするかしないかは、どう生きるかを決めることでもあると思いますね」
(本誌・鮎川哲也)
※週刊朝日 2022年9月9日号