■次のピークは20年代半ばに

 さらに、宇宙放射線が大気圏に入ってくると、大気中の原子や分子と衝突し、“空気シャワー反応”で2次宇宙線が発生して、航空機の乗員に被ばく線量増大の恐れがあるとされる。

 北極や南極のある極域は地球の磁場が開いている。草野さんは「特に極域は危険」と指摘する。日本などの航空機の航路は北極近くの緯度の高いところを飛んでいるので、被ばくの影響を受けやすいという。そうなると、「フライトは全世界的にキャンセルせざるを得ない」という事態になると草野さんはみている。

 前述のように太陽フレアは、黒点で起こる。草野さんによると、黒点の数が11年周期で増減する統計的な傾向がある。11年周期で活発期を迎え、次のピークは2020年代半ばとみられている。

 だが、話はそれほど単純でない。草野さんは「極大期でなく、黒点の数が少ないときでも、大きな黒点ができて影響が出ることもある」と話す。黒点は1日でできることもあるので、黒点の活動期でなくても、警戒は必要という。

 太陽フレアによる影響については、津川さんも「いつ起こってもおかしくない」と話し、「規模と継続時間にもよる」とみている。

 冒頭で、太陽フレアが影響した最近の事例を紹介した。現代は携帯電話を含む通信などの技術が日進月歩で進んでいる。GPSの位置情報を使う自動運転技術なども実用化の時代を迎えている。そうした技術の利用環境がかく乱されるだけで、現代生活の人々はお手上げだ。

 草野さんは「現代人には致命的な影響の可能性がある」と話す。

 そうした事態が起こる可能性を、少しでも事前に予測し、備えておこうというのが宇宙天気予報だ。今回の検討会の報告書について、総務省国際戦略局宇宙通信政策課の担当者は「周知徹底していきたい」と話す。

 大規模な太陽フレアが予測されると、情報通信研究機構が「警報」を出し、政府が発表するという。どこで、どんな備えをすればいいのか。議論や対応はこれからだ。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年9月9日号

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