ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「サングラスと有名人」について。

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 以前、この連載でも書きましたが、私は現在47歳にして初めて吉田拓郎の音楽と向き合っています。そうは言っても、いつの時代のどの作品から手を付けてよいのか皆目見当もつかず、とりあえず会う人会う人に「実はここへ来てようやく吉田拓郎を聴いてみようと思っている」旨を伝え、ひょっとすれば「だったらあの曲、あのアルバムを是非聴いてみるとよい」などのヒントを貰えないかと目論んでいるところです。

 音楽とともに、これまで拓郎さんが出演したラジオやテレビ、雑誌のインタビューなどにもできるだけ多く接しようと試みているのですが、さすが日本のシンガーソングライターの基盤を作った人だけあって、彼から派生するミュージシャンや歌い手の多いこと。すぐに横道に逸れては、ユーミンを聴いたり、アルフィーのYouTubeを観たりしてしまい、なかなか拓郎本体への消費活動に繋がりません。

 そんなわけで今週は、ずっと井上陽水を聴いていました。ついでに90年代の「タモリ倶楽部」の映像なども観漁り、あろうことか「陽水三昧」の日々を送っている始末。昔から陽水さんとタモリさんが繰り広げる妄想やイチャモンは大好きでしたが、改めて観返すと、私のひねくれた人格を自己肯定できたのは、このふたりの存在がかなり大きかったのだと実感させられます。

 それはそうと、タモリ・陽水のツーショットを見ていると、近頃は四六時中サングラスをかけている芸能人が少なくなったなと感じます。その昔「メガネは顔の一部です」というコマーシャルがありましたが、かつてはサングラスと顔が一体化した人がたくさんいたものです。タモリさんや陽水さんを筆頭に、鈴木雅之さん、浜田省吾さん、アルフィーの桜井さん、サンプラザ中野さん、横浜銀蝿の人、みうらじゅんさん、Mr.マリックさんなど、一般市民がその下にある素顔を目にすることは有り得ませんでした。彼らは今も変わらずグラサン込みの顔で出ています。

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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