■初オフ会は小児科クリニックで

 その翌年に、小児科医の友人あーちゃんが、「クリニックで、ちーちゃんのブログのオフ会をしてみない?」と提案してくれました。当時の私には、ブログというのはバーチャルな世界で、その中の人に直接会うというイメージが無かったのですが、「絶対に意味があるはず」というあーちゃんの一言で、クリニックをお借りしてチャレンジさせてもらおうと思いました。

 あーちゃんのクリニックは駅から近く、ワークショップができるような広いスペースもあり、何より参加する方にとって「小児科」は安心できる場所です。とてもありがたい環境でした。共通の友人の心理士のマリちゃんも「手伝うよ」と言ってくれ、3人で初めての会を企画しました。5組集まったら開催すると決めてブログ内で募集をかけたところ、すぐに13組の応募があり、開催が決定しました。

 脱バーチャルの顔が見えるリアルなつながりです。

■かるがも親子のように寄り添う

 会は大盛況で、初対面とは思えない程に打ち解け、参加してくれた方全員で、このコミュニティの名前を「かるがもCPキッズ」にしようと決めました。

 CPは、脳性まひの略語です。「かるがも親子のように、脳性まひの子どもたちに寄り添う」というコンセプトもみんなで考えました。

 そして参加した13組の半数以上が県外の方だったことから、会のニーズを実感し、1度きりではなく今後も継続していこうと決めました。

■ピアサポートでつながり深まる

 2017年に法人化してからは、近隣の大学とコラボレーションしたイベントを開催したり、複数の学部の授業で、障害のある子どもたちの生活についてお話をさせて頂いたり、ワークショップの様子を学会で発表したり、さまざまな取材を受けたりと、当事者以外の専門家とのつながりも増え、専門性の高い情報を発信できるようになりました。

 また、ピアサポート(※ピアは仲間という意味。経験者が相談にのるシステム)を立ち上げたことで、さらに細かく自分の困りごとを話せるママたちとつながることができるようになり、運営するサポーター同士のつながりも深まりました。そしてこの頃には「障害児を育てているのが自分だけではないと思えたことで、前向きになれた」という声が顕著に増えました。

■「娘に車いすのお友達ができた」

 コロナ禍でしばらくは対面のイベントができずオンライン講座ばかりでしたが、先月3年ぶりに、インクルーシブ遊具のある都内の公園で、大学の特別支援教育ゼミの学生さんたちとともに少人数の対面イベントを開催しました。

 ある女の子のママは「娘に車いすのお友達ができた」と、とても喜んでいました。

 車いすに乗った子どもたちが遊ぶ姿はコロナ前と全く同じ光景で、再びこういう場所を提供できるようになったことを本当にうれしく思いました。

 これからも、そんな企画をたくさん考えて提供していきたいです。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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