■相手と同化していく
豆塚さんは、18歳の頃にツイッターを始め、詩が好きな人たちとやり取りするようになった。6年ほど同じコミュニティーにいたが、あるとき“闇に引きずり込まれていく感覚”を覚えたという。
「似たような人と触れることで、安らぎを得る分にはいいと思うんです。ただ、ずっと一緒にいると、お互いの闇に引っ張られていくというか。葛藤や飢えを埋めあえるわけでもなく、加速していく何かがあるんです」
病気や将来への絶望感、不安定な親子関係。似た経験があるから、共感しあえる。わかってもらいたいし、わかってあげたい。話し続けるうちに、相手と同化していく感覚に陥った。
「現実と自分の世界がさらに乖離(かいり)して、自分のことをわかっている人はSNSのそのコミュニティーにしかいないと思い込んでしまう。でも、居心地が良いことと、希死念慮から逃れて前向きに生きていくことは、やっぱり別なんです」
コミュニティーからの離れがたさはあったが、豆塚さんは1年ほどかけて距離を置いた。自殺未遂後のリハビリを通して看護師や介護士ら「外」の人と接したことで、考え方も変わっていったという。(編集部・福井しほ)
※AERA 2023年1月23日号より抜粋