
SNSは同じ趣味を持つ人とつながれるメリットがある一方、似たような人と接することで特定の価値観に引っ張られてしまう恐れもある。AERA 2023年1月23日号の記事から。
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目に飛び込んできたツイートを見て、ドキッとした。
「もう苦しみたく無いし悩みたくも無い。」
「さようなら。」
昨年10月、31歳の会社員女性のツイッターのタイムラインで「おすすめ」された投稿の一部だ。ツイートには診断書の写真が添えられ、投稿主とみられる男性が病気に悩んでいたことがうかがえた。
■苦悩が「おすすめ」に
ツイートを見るまで、この男性の存在を知らなかった。だが、少なからずショックを受けた。
「書き置きツイートは男性の遺書だと感じました。自分もネガティブなほうなので、引っ張られそうになった」
同時期、女性のタイムラインには自死遺族の苦悩をつづった投稿が頻繁(ひんぱん)におすすめされるようになった。関連は不明だが、ツイッターを開くたびに暗い気持ちになった。
「元気なときは大丈夫。でも、仕事や人間関係で疲れたときに表示されると気が滅入った。吐き出す場所はあるべきだと思うけど、『おすすめ』はしないでほしい」
SNSには、フォローしているアカウントの属性や閲覧傾向から、その人に合う投稿を表示するレコメンド機能がついていることが多い。料理に関する投稿をよく見る人にはレシピやグルメの情報が表示されやすくなる、といったものだ。
幅広く情報が得られたり、同じ趣味を持つ人とつながることができたりといったメリットはある。その一方で、この女性のように思わぬタイミングで予期せぬ情報と接したり、特定の価値観に引っ張られたりすることもある。
「ちょっとまずいと感じて、自分でセーブをかけました」
そう話すのは、詩人の豆塚エリさん(29)だ。小学5年生のときに希死念慮(きしねんりょ)を抱き、16歳で自殺未遂をした。そのときに頸椎を損傷し、現在は車椅子で生活している。