TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。ピアニストの反田(そりた)恭平さんについて。
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「コンクールはそれこそ何万とありますが、ショパン国際ピアノコンクールは世界最古で、トップに君臨しています。16歳から30歳までの年齢制限があり、5年に一度の開催だから、27歳の僕にとって本当にラストチャンスだったんです」
第18回ショパンコンクールで第2位を受賞、51年ぶりに日本人歴代最高位を達成した反田恭平の声がラジオから聞こえてきた。クラシック界の若きスターが凱旋生演奏を披露する夕方だった(TOKYO FM『THE TRAD』DJ 稲垣吾郎)。
生演奏の前に彼はピアノの音色を入念に調整、練習を繰り返していた。作業はすべて自分でやる。そして、幾多の試練を乗り越えてきた。
リハーサルが終わるころを見計らって挨拶に出向くと、リラックスした表情でおにぎりを頬張っていた。
「この間はすみませんでした」と開口一番。実は2021年の前半、イベント出演をオファーしたのだが、ショパンコンクールが急遽開催となり、ポーランド行きが決まったのだ。僕ら局もクライアントも、「がんばれ!」と送り出した。「だから、2位になって恩返しできてよかったです」
今回は史上最多の53カ国502人のエントリー、予備予選をパスしたのが87人。
「技術面は一次予選で選別され、二次では芸術面、三次では将来性を見られます。12人がファイナルに進み、そこまできたらもうお祭り騒ぎ(笑)」
ポーランドに住み、5年かけて準備をした。
「コンクールに赤本はありません。過去2回の参加者、800人の挑んだ曲を調べた。どれが通りやすいのか、A4の紙に『正』の字を書き、その中から選んだ曲をコンサートで弾き、3年かけてフィーリングが合うかを試しました。受けるならトップを目指そうって」