写真はイメージです(Getty Images)
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 不登校やひきこもりが社会問題になっている。その原因やきっかけに「家族との関係」を挙げる人は多い。子どもの将来を思っての親の言動が、ときには子どもを追い詰めることもある。不登校やひきこもりは、家庭内暴力に発展することも多い。立ち直るための大きなカギは、家族との関係改善だ。第三者に支援を求めることで、家族との関係を立て直し、社会復帰を果たすことができたという元ひきこもりの男性を取材した。

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 福田大和さん(仮名、27歳)は、中学校の保健体育の非常勤講師だ。

 昔から運動は得意だった。子どもと関わることも好きだし、今の仕事にはやりがいを感じられる。来年は教員採用試験を受けて、正規の教員になることを目指している。

 健康的で明るく、社交的な青年に見える大和さんだが、実は学生時代、何度も不登校になり、家にひきこもった経験がある。さらには家庭内暴力の末、警察沙汰になったこともあるという。

◆優等生でサッカー部のエースの変貌

 大和さんが初めて不登校になったのは、高校二年生の秋だ。

「こんなはずじゃない。何か違う」

 あるとき、自分の中に黒い雲のようなものが広がっていくようで、苦しくなり、耐えられなくなった。

 当時、大和さんは県内でもトップクラスの進学校に通っていた。成績優秀で、国立大学を目指して勉強し、海外留学も予定していた。

 家庭環境にも恵まれていた。有名大学出身で一流企業に勤める父と専業主婦の母。両親は教育費を惜しまず、大和さんも小学校のときから常に優等生で、学級委員も務め、サッカー部ではエースだった。

 はたから見れば、陽の当たる道を歩んできて、これからも道は拓かれている、順風満帆な人生だった。

 しかしあるとき、大和さんはその道を「これは俺の人生じゃない」と思った。

「親に押しつけられた人生だ」

 そう思い始めてからは、何をしていても落ち着かない。教科書や本を読んでも、文字が頭に入らない。夜も眠れない。ついに学校に行けなくなった。

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母親は宗教に傾倒した