昨年の夏の第5波の時も思いましたが、PCR検査をし、陽性だったら「保健所」に連絡し、入院か、ホテル療養か、自宅療養かの保健所からの指示を待つという現状のやり方には疑問を感じざるを得ません。医師がコロナ陽性と判断した時の患者さんの状態から、入院が必要かそうでないかを決めれば、十分だと思います。Aさんのように元気な人まで、高額な支払いが必要となる病院に隔離させる必要があるのでしょうか。自宅で療養していただき、オンライン診療にてフォローアップすれば十分だと思います。実際、私もSNSを利用してAさんに現状を伺うようにしています。

 1月3日時点で、ブースター接種を終えた日本の人口の割合は0.5%です。多くの医療従事者は、2回目の接種から6カ月以上経過しており、予防効果は落ちてしまっています。そんな中で、空気感染する「重症化しにくいものの、感染力が強い」オミクロン株のコロナ患者を病院で隔離すれば、院内感染を引き起こしかねません。

 やはり悔やまれるのは、どうして3回目の接種を早く開始しなかったのかということでしょう。

「オミクロン株」の流行を受け、世界の多くの国で3回目の接種が急ピッチで進んでいます。Our World in Dataによると、日本を除くG7の国々は、8月末から9月末にかけてブースター接種を開始しており、1月7日ないしは8日時点でブースター接種を終えた人口の割合は、イギリス51.7 %、ドイツ37.8 %、フランス36.7 %、イタリア37.1 %、アメリカ22.6 %、カナダ25.4 %です。

 日本が圧倒的に遅れていることは一目瞭然です。そんな状態での、年始からのCovid-19の感染拡大ですから、起こるべくして起こったと言っても過言ではないでしょう。

 ワクチンは、自分を守ることに加え、感染拡大を予防するために接種するものです。他国のように、人が多く移動することが予想された年末年始前から追加接種(3回目の接種)を開始すべきだったと思います。2回目の接種から時間が経過すれば予防効果が低下することがすでに報告されているのですから、今すぐにでも3回目の大規模接種の開始をお願いしたいです。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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