「人には必ず好き嫌いがあります。音楽も、好きなジャンルはそれぞれ違って、レゲエ、ヒップホップ、ジャズ、演歌、J-POP……。みんな違ってみんないい。全ては好みなんですよね。何がメジャーかマイナーかぐらいなら、統計は取れるけど、それぞれが無意識のうちに好きなものを選択できるのがエンタメだと思うんです。だから、僕にできるのは、自分が『こういうものが見たい』という作品を提示するだけです」

◆日本のエンタメを盛り上げたい

 さまざまな演出家の演出を受け、背中を見つめながら、自分のものとして吸収できている部分はあるのかと聞くと、「『誰かのまねはしていない』と言えますが、確実に皆さんの影響は受けています」と言って微笑んだ。

「演出の勉強をしていない僕が、自分で演出をするとき、頼りにするのは自分の経験値やセンスしかない。だから、『これがいい!』と思う感覚には、これまで出演した舞台の経験、これまでに観た映画や舞台……誰かが作ったエンターテインメントから、何かしらのアイデアやインスピレーションをいただいているはず。自分の感覚が、完全なオリジナルだなんて思っていないから、逆に、演出をすることが怖くないんです。多分、今度の稽古も、キャストやスタッフと同じ場所に立って、『みんなこっちだ~』と言った後に『わー、違ったこっちだー、ごめん』とか(笑)。そんな感じで、迷いながら、一つひとつ積み上げていくことになると思います」

 もちろん若さもあるのだろうが、彼の発想は、すべてが柔軟で、とても寛容。人に対しても、自分に対しても、「○○すべき」を持たない。

「今は、思っていることを素直に発言してますが、自信がなくて、強がっていた時代もありましたよ。これまでの経験や発言を年表にしたときに、今はこんなこと言ってても、5年後、全く違うことを言っている可能性だってある(笑)。『恥ずかしいな、あのときの発言』って思うかもしれない。でも、人間ってそういうふうに変わっていくものだと思う。とくに、ものを作っている人間、作り出そうとする人間は、凝り固まって、『絶対これ』という感覚は、持たないほうがいい。なぜなら僕は、表現には正解がないと思っているからです。アートだって、ある時代は否定されていたものが、脚光を浴びたりしますよね。表現の場合は、何がどう評価されるかわからない。僕らのような舞台を作る人間は、常にチームプレーなので、演じる対象によって考え方も変わるし、作品のたびに僕自身も変わっていく。そのセッション感が、ライブなんだと思いますね」

暮らしとモノ班 for promotion
夏の大人カジュアルに欠かせない!白のレザースニーカーのおすすめは?
次のページ