腰痛・足のしびれや痛みを引き起こす主な病気には、腰部脊柱管狭窄症と末梢動脈疾患(PAD)がある。薬物療法から注射、手術までいろいろな治療法があるが、それぞれどのように進められるのだろうか。
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腰痛・足のしびれや痛みは、病院に行く前に自分でケアできるのだろうか。JR広島病院整形外科主任部長の田中信弘医師は次のように話す。
「程度によりますが、慢性的な腰痛であればストレッチや腹筋・背筋の軽い筋トレといった運動療法、コルセット装着、湿布薬などで管理はできます。その動作によって痛みが増強するストレッチや運動は控えましょう。日常生活で腰に負担をかけない工夫はできると思いますが、痛みが続けば適切な診断や治療が必要です」
■高齢者の薬物療法は副作用に注意
腰痛・足のしびれや痛みを起こす代表的な病気の一つが、腰部脊柱管狭窄症だ。田中医師によれば、薬物療法では消炎鎮痛薬のNSAIDsがよく使われていたが、高齢者の場合は消化管や腎臓の機能が悪くなる副作用に気をつけなければいけない。そのため、最近では解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン(商品名カロナールなど)か、神経の痛みを取る慢性疼痛治療薬のプレガバリン(商品名リリカ)が広く使われるようになっている。これを急性期であれば数週間、慢性的な症状であれば数カ月試すのが一般的だ。病院により、あわせて温熱療法や牽引などをおこなうこともある。
武田総合病院副院長の川西昌浩医師は、腰部脊柱管狭窄症の治療についてこう話す。
「インターネットでも公開されている『腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン』で、治療法などに関する正確な情報を得ることができます。両方のお尻や足に症状が出る馬尾型というタイプで軽症ならば、神経の血流を改善するプロスタグランジンE1製剤(一般名リマプロスト、商品名オパルモンなど)という薬が効きます。これは2番目に推奨度の高い薬です。一方、片側のお尻や足に痛みが出る神経根型というタイプでは、消炎鎮痛薬のNSAIDs(商品名ロキソニンなど)が効くとされています。ただしNSAIDsは胃潰瘍などの副作用に十分注意が必要です。これらの治療で改善しない場合や、日常生活に支障が出ている場合は、手術も検討します」