ジョンとポールはオールディーズや初期ビートルズナンバーをセッション、「アビイ・ロード」の収録曲や、ソロアルバムに入る曲も演奏している。

 年末年始はこの映像を繰り返し何度も観た。

 ソニーレコードに勤める友人宅では、ノーカット完全版を楽しみ、祝杯をあげた。

 それにしても映像は恐ろしい。編集で暗くも明るくもなる。とすると、僕らは半世紀以上、映画「レット・イット・ビー」のじめじめとした印象に支配されていたのだ。

 日本人で初めてビートルズのインタビューに成功した元ミュージック・ライフ編集長、星加ルミ子さんにゲリラライブを目撃した時の話を伺ったことがある。

「人でごった返していた。ビートルズ!?ってサラリーマンやOLがワサワサしている。こんな真っ昼間にうるさい!って屋上に向かって怒鳴っている紳士も」。今にも雪が降ってきそうな寒い午後だった。知らせを聞いて星加さんがアップル本社ロビーに入ったら「ゲット・バック」が流れてきた。「演奏が終わってとんとん階段を駆け下りる足音がした。とにかく寒いからほっぺを真っ赤にして下りてきて、風のように走り去り、クルマの中に姿を消した。それが4人を見た最後でした。そのあと間もなくして彼らは解散を宣言したんです」

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞

週刊朝日  2022年1月28日号

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延江浩

延江浩

延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー、作家。小説現代新人賞、アジア太平洋放送連合賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞、放送文化基金最優秀賞、毎日芸術賞など受賞。新刊「J」(幻冬舎)が好評発売中

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