自分の野球哲学についてオースティンは次のように語る。

「アメリカ時代から自分らしく、自分のゲームをやろうとプレーしている。そして、野球をしっかりと楽しむこと。力むこともない、背伸びすることもない。自分のできることを全力でやるだけだよ」

 自分が野球を楽しむためには、チームメイトも同様に野球の素晴らしさを享受してほしい。だからこそオーティンは仲間たちとコミュニケーションをとり、頼れる存在としてチームを盛り上げるのだ。

 シーズンも押し迫った10月5日、阪神戦で左ふくらはぎを肉離れし、戦線離脱をしてしまう。場合によっては全治まで1カ月以上かかってしまう負傷。残りのシーズンを約3週間と考えれば、このまま帰国してもおかしくはなかったが、オースティンはチームから離れることなく帯同され治療に専念した。規定打席数をクリアするまであと4打席ということもあったが、最後まで諦めることなく一緒に戦いたいという気持ちを露わにしてバックヤードで懸命にリハビリをしていたオースティンをチームの誰もが目撃している。

 明るいキャラクターとリーダーシップで誰からも愛されたホセ・ロペスがかつてそうだったように、オースティンは今やチームにとって精神的支柱だといっても過言ではない。

“メガプロスペクト”と呼ばれメジャーで活躍していた若き日は気性の激しさが目立っていたが、今は誰もが認めるジェントルマン。全力プレーが身上なだけに故障はつきまとうが、今季DeNAが24年ぶりの悲願を達成するためにはオースティンの存在は欠かすことはできない。2年前の初来日直後、オースティンは真っすぐな眼でこう語ってくれた。

「いかなる方法であってもチームの勝利に貢献するのが自分の役割。そして最終的にはチャンピオンシップを獲得するんだ」

 アグレッシヴでハートウォームなオースティンの献身は、果たしてチームを頂点へと導くことができるのか、ぜひ注目したい。(文・石塚隆)

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