古賀茂明氏
古賀茂明氏

 山本准教授によれば、韓国政府は、政治交渉で米軍に厳格な措置を実施させたということだ。

 つまり、差別でも何でもない。単に、日本政府が米国に対して言うべきことを言わなかったというだけなのだ。「モノ言う力」で韓国に負けたのである。

 国内の批判に慌てた日本政府は、米国政府に厳格な対応を要請したフリをしたが、遅すぎた。沖縄では米軍による感染拡大のせいで、医療崩壊が起きている。

 元々、米国政府に「モノ言う力」ほぼゼロの日本ではあるが、そこに登場した岸田総理の「聞く力」。米国の要請にもこの力を最大限発揮しつつある。GDP比2%以上の防衛費を目指すという選挙公約を掲げ、防衛費予算を拡大、敵基地攻撃能力にも前のめりだ。それで潤うのは、米国武器産業。米国政府は岸田総理の「聞く力」にウハウハだろう。

 国民を守るためには日米地位協定の改定が必要だが、改訂協議をという野党の質問に岸田総理はゼロ回答だ。国民に対して岸田総理が発揮するのは、「聞く力」ではなく「聞き流す力」でしかない。「聞く力」の一番の受益者は米国だということを私たちはしっかり認識しなければならない。

週刊朝日  2022年2月4日号より

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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