写真はイメージです(Getty
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写真はイメージです(Getty  Images)

 第一の試しの過程を経たら、次は、それでも共存の道を選ぶのか、一度離れてみるのか、離婚という道を選ぶしかないのか、自分が今後どうしたいのかをしっかり考えること。

 モラハラ行動をする人は、狭い範囲では正論であることも多く、何より本人がそれを信じているので、妙に説得力がある。『妻のトリセツ』などの著書で知られる脳科学・AI研究者の黒川伊保子さんは言う。

「モラハラ被害の対処法は、逃げるか、徹底してやり過ごすか、基本的にはその二者択一になる。モラハラ加害者は、全体を掴む能力が低い傾向にあり、いくら説明しても“その場の正論”だけでしか状況をみられません。逃げずに共存するなら、徹底してやり過ごし、自分の尊厳を傷つけられないようにすること。加害者とは生活空間をなるべく分けて、相手が口を出すチャンス機会を減らした方がいい」(黒川さん)

 相手から離れることがベストだが、モラハラ被害者は経済的な問題や子どものことを考えて、「今は離婚できない」と共存の道を選ぶ人が多いという。谷本さんによると、被害者の中には、“仕事”として難しい客の対処をするという意味合いで、「旅館の女将さんのような気持ちで夫に接している」という人もいるそうだ。相手の言動に引っ張られずに、自分の考えを守るためには、それだけの割り切り力と強い客観性、そして意思が必要なのだ。

「改善されるかどうかが分からない、長い道のりになるため、自分の中で期限を決めて共存の道を試してみるのも一つの手です」(同)

 ただ、それは危ういバランスの上に成り立つ結婚生活だということも認識しておくべきだろう。いざという時のために、日ごろから“証拠”を用意できるよう動くこと。例えばレコーダーなどで会話を録音したり、壊された器物の写真を撮っておいたり、日記をつけるなどしておく。そうすると、いざ離婚という時にモラハラの証拠になる。

 夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんは言う。

「モラハラ加害者は、モラハラをしている自覚に欠けていることも多く、モラハラを理由に離婚を求めても応じないことが多い。協議離婚や調停離婚による場合でも、配偶者にモラハラを自覚させ、離婚を認めさせるために、証拠は重要です。モラハラは身体的暴力と違って、目に見える傷は残らない。前もって証拠を残そうと動く必要があります」

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本来の性格を変えてしまうモラハラ