一方、ワクチン接種後の死亡は千件以上に上っている。死因は虚血性心疾患や脳出血などが多いが、ワクチンとの因果関係は多くが「評価不能」「関連なし」とされた。

「日本は諸外国に比べても解剖数が少なく、死因究明の体制が脆弱です。最近では、抗うつ剤の副作用が原因で自殺するとの説もありますが、自殺者が法医解剖されることはほとんどない。死因をうやむやにすることは亡くなった人やその遺族にとって無念なばかりではなく、結果的に薬やワクチンの副作用の可能性についても、目をつむることになるのです」(岩瀬教授)

 コロナ禍により、私たちは「人の死」について、さまざまな課題を突き付けられた。入院患者の面会は厳しく制限され、看取ることも葬儀を行うことも叶わないまま、多くの遺体が荼毘に付された。東京大学大学院客員教授(生命倫理学)の小松美彦氏はこう語る。

「私たちは、家族の死を見送るためのイニシエーション(儀式)が必要です。医師から死亡の宣告を受け、かけがえのない人の体に触ると、ぎょっとするような冷たさとこわばりを感じる。葬儀で多くの人々と哀しみを分かち合い、火葬場で骨と灰を眼前にする。こうした過程を経て、家族の死を現実として受け入れる。コロナで亡くなった人の遺族たちはこの一連の過程が寸断されているから、喪失感はいっそう大きいのです」

(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2022年2月4日号より抜粋

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