去年、取材で訪れた三陸鉄道も印象的でした。東日本大震災の被害を大きく受けた路線で、駅も線路も新しい。作り替えられた新しい駅や設備を見たことで、震災の苛烈(かれつ)さを改めて実感しました。大震災は私も伝えるのがつらくて、ようやく、震災から10年経った昨年福島を、そして今年岩手を作品化させていただきました。
鉄道マニアとしてではなくて実際にそこで暮らす人から見た、鉄道を失うしんどさや、移動手段を超えた意味、鉄道が走ることで与えられる勇気みたいなものは、今後も作品の中で伝えていければと思っています。
『テツぼん』に込めている一番の思いも、まさにそこなんです。鉄道はマニアのためではなくて、そこに住んでいる利用者のためにある。そのことは忘れずにいたいですね。
(構成/編集部・川口穣)
※AERA 2022年8月8日号