鉄道に魅せられるきっかけは、人それぞれだ。漫画『テツぼん』原作者・高橋遠州さんの場合は何だったのか。そして、作品に込めた思いとは。AERA 2022年8月8日号で、高橋さんが語ってくれた。
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私が原作を担当する『テツぼん』(ビッグコミックオリジナル)は、疎遠だった国会議員の父親が亡くなり、選挙に担ぎ出されて衆院議員に当選した28歳(初登場時)の鉄道オタク・仙露鉄男が主人公。鉄道の知識と知恵でさまざまな課題解決に取り組む物語です。
2008年に連載を始めて14年が経ちましたが、ネタは尽きないです。よく、主人公の提言や取り組みがユニークだと言っていただけます。実際にどこかの地方であったケースをアレンジしたり、鉄道マニアの間ではよく知られているけれど一般的には知られていない知識を持ち込んだり。鉄道と政治を結びつけると、書くことはいくらでもあります。
私自身も子どものころから大の鉄道好きでした。浜松出身で、家のすぐ近くを東海道線が走っていた。それを眺めて喜んでいました。小学生のころに開通した東海道新幹線も憧れの存在でした。高校卒業後に東京に出てきて、アルバイトである程度自由に使えるお金ができるようになると、実際にいろいろな鉄道に乗るように。一時は全国の路線を端から端まで乗りつくす「完全乗車」をめざしたこともありました。完全乗車は結局挫折しましたが、今も「乗り鉄」、特に車窓からの景色が好きな「車窓鉄」です。やっぱり鉄道の車窓って車とはまったく違うし、ローカル線に乗ると懐かしい昭和の景色も眺められます。映像を見ているようで楽しいですね。
好きな路線はいくつもありますが、中でもJR飯田線(豊橋-辰野)はよく乗っています。自宅が浜松で比較的近いので、青春18きっぷを使って乗るんです。秘境路線として有名で、よくこんなところに駅があるなと驚くほど。