■「わからない」と答えた人の理由

「メリット、デメリットをちゃんと把握して決めたいから」(7歳女児の母)

「ワクチン接種した人が感染しても、症状は軽くすんでいるが、副反応のリスクと、オミクロン株の感染状態、症状と併せて考えると、受けた方がよいのか、その必要があるのか、わからない」(7歳男児の母)

「海外では子どもの接種が進んでいるので、当然、打たせようと思っていたけど、ここ最近の小児専門家の意見は『病気持ちなら推奨、あとはそんなに急ぐことではない』と、結局『自分で考えて判断して』と言われているようで迷っている」(5歳と8歳の子の母)

「接種開始頃にはオミクロン株による第6波はおさまってくると思うから」(10歳女児の母)

 アンケートでは「専門医に聞いてみたいこと」として、保護者から様々な質問が集まった。ここからは、主な質問をQ&A形式で森内教授に解説してもらう。

Q. オミクロン株に感染した場合の重症化率、致死率、MIS-C(小児多系統炎症性症候群)の発生率について教えてください。(10歳女児の母)

 アメリカでは、オミクロン株の流行に伴い、子どもたちの入院が増加しています。ただし、オミクロン株で重症化したというよりは、感染者数がこれまでと比較にならないほど増えたことを示しています。つまり、分母の数が増えたので、重症化率は低くても入院するベッドはあふれかえる現象が起きています。

 オミクロン株前を含めて、日本における15歳未満の感染者が10数万人いますが、亡くなった人は現状いません。ただし、日本でも人工呼吸器につながれて、やっと助かった子どもの事例もありますから、決して軽く考えられるものではありません。一方、アメリカでは5~11歳の約190万人が罹患し、約100人亡くなっています。約2万人に1人が亡くなる確率です。これはインフルエンザとあまり変わりません。日本でも、新型コロナで10代後半や20代は2万人に1人死亡しています。普通の風邪で2万人に1人亡くなることはまずありませんので、新型コロナはただの風邪ではなく、決して無視できない高い確率です。アメリカで重症化する子どもが多い理由として、マイノリティの存在、肥満児が多いこと、そして次に述べるMIS-Cの存在があります。

 MIS-Cは、当初、「川崎病」によく似た症状があると欧米で報告されていた新型コロナの合併症です。MIS-Cを起こすと約1%(100人に1人)が亡くなっています。これは、ヒスパニック系やアフリカ系の子どもに多く、アジア系には非常に少ないです。アメリカでは多いのですが、日本では非常に稀です。アメリカでは重症化しやすい肥満児も多いことが背景にあるとされます。

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