厚労省は雇用調整助成金に関する特例措置を、1月以降は助成額を減らしつつ22年3月末まで実施中。20年3月以降、これまで5兆円超を支給した。困窮する企業へ支給を増やすのはいいが、労働者に負担増を強いるのは妥当か。社会保険労務士の佐藤麻衣子さんに聞いた。

AERA 2022年1月31日号より
AERA 2022年1月31日号より

「雇用調整助成金により雇用が守られた側面はありますが、現役世代の負担が増える結果となっています。助成金の恩恵を受けていない企業もたくさんありますから、一律の負担増に不満を感じる人も多いようです」

 では今回の料率引き上げによって労働者の負担はどのくらい増すのか。「失業等給付」にかかる分が現行の0.2%から0.6%となることは前述した。

■介護保険も定期値上げ

「育児休業給付」にかかる分は0.4%のまま据え置かれる。その結果、平均すると労働者負担分の料率は0.3%から0.5%に引き上げられる=右の表。

 まず「税負担+社会保険料負担」が収入に占める割合は、当然ながら高所得者ほど大きくなる。だが「社会保険料負担」が収入に占める割合は「年収800万円まで」のほうが高くなる。社会保険料は収入×料率で計算されるので、ボーダーラインの年収800万円世帯は金額的に最も重く感じられる。

「この試算の場合、年収800万円で厚生年金の保険料は上限71万3700円に達し=表内の赤枠部分、それ以上の収入があっても負担は増えません。また、年収800万~1千万円世帯は市区町村の児童手当や国の『高等学校等就学支援金制度』、雇用保険の『育児休業給付金』で支給上限基準に該当しそう」

 なお、社会保険の負担増は雇用保険料に限った話ではない。21年4月から介護保険の保険料も引き上げられており、それまで5869円だった全国平均が6014円になっている。介護保険料は24年にも引き上げられる予定だ。厚労省が算出した予測値は6856円。これら社会保険料引き上げによるサイレント増税は、じわじわと家計を弱らせていく。

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