各地で発熱外来を受診し、検査や検査結果の通知を受けるまでに数日かかるなど、感染が疑われる場合の入り口が詰まってきている。このため、重症化リスクの高い人も診断が遅くなり、重症化を防ぐ薬が出てきているのに、必要な人に使えなくなるおそれが高まっている。 

 そこで厚労省は、発熱外来の受診までに時間がかかる自治体では、症状があり、しかも感染者の家族ら濃厚接触者の場合など感染している可能性が高ければ、検査なしでも医師の判断で感染を診断できるとした。 

 加えて、40歳未満で基礎疾患や肥満がないなど重症化リスクが低い、症状のある人には、まずは30分ほどで結果の出る、自分で鼻腔のぬぐい液を採取して調べる抗原定性検査キットなどで検査をした上で、陽性なら受診するよう呼びかけていく。 

AERA 2022年2月7日号より
AERA 2022年2月7日号より

■リスク低い人への対応 

 提言を出したメンバーの一人、岡部信彦・川崎市健康安全研究所長はこう説明する。 

「感染者がこれだけ短期間に急増する状況に対応するには、ギアチェンジが必要です。大切なのは、重症化リスクのある人が適切なタイミングで診断されることと、症状が重くなってきて治療の必要になった人を病院が速やかに受け入れられる状態を維持することです。そのためには、オミクロン株感染者の多くを占めるリスクの低い人への対応を変える必要があります」 

 厚労省は、外来医療が逼迫しそうな場合は、軽症で、重症化リスクが低い人は、医療機関を受診せずに自分で実施した抗原検査の結果に基づき、自治体の「健康フォローアップセンター」に連絡して健康観察を受け、受診が必要ないと判断されたら、そのまま自宅療養することもできるとした。 

 沖縄県や神奈川県はすでに、こういった仕組みを導入した。ただし、抗原検査キットが現在、全国的に不足しており、どこまで実施できるのか懸念が残る。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2022年2月7日号より抜粋