すでに海外の一部では、オミクロン株の亜種で従来より18%ほど感染力が高い「ステルス・オミクロン(BA.2)」も広まっている。今後も新たな変異株の出現への警戒は怠れない。新たなる危機の中、またも日本の感染対策は迷走している。
医療の逼迫(ひっぱく)が見込まれる中で厚生労働省が苦肉の策として示したのが外来診療の“新方針”だ。「40歳未満で基礎疾患がなく、ワクチン2回接種済み」の重症化リスクが低い人は、軽症の場合、「受診せずに自分で検査して自宅療養できるようにする」というもの。従来の「症状がある場合は原則受診」の方針から事実上、転換した。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が指摘する。
「40歳未満で基礎疾患のない人が、どうして一律に低リスクと言い切れるのか。患者さんは個別に診ないとわかりません。実際、持病を自覚していない人や、基礎疾患のない人でも重症化したケースが何件もあったはず。そもそも国がリスクの線引きをして、ある集団は受診の必要がないかのように言うのは、あり得ない対応です」
米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(1月27日付)で、米国の研究グループが発表したデータは、日本の対応とは対照的な内容だった。
コロナの症状が出てから7日以内で、60歳以上または60歳未満でも肥満や糖尿病、高血圧などの危険因子が一つでもある562人を対象に臨床試験を実施。治療薬のレムデシビルを3日間投与したグループは、偽薬群と比較して、入院・死亡のリスクが87%低いという結果となった。つまり、重症化を防ぐためには、早期の治療が有効であることを示しているのだ。上医師が解説する。
「米医学誌がこうしたデータを発表したのは、重症化率が低いオミクロン株といえどもゼロリスクではないのだから、早期発見・早期治療が必要とのメッセージなのです。自宅療養では、そのチャンスをみすみす逃してしまいかねないのです」