政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長
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 オミクロン株の感染爆発を受け、政府はこれまで34都道府県に「まん延防止等重点措置」を適用した。だが、従来通りの対策を繰り返すだけで十分な効果があるのか、専門家は疑問を呈する。新局面に対応した、いま打つべき対策とは何なのか。

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 感染力の強いオミクロン株による「第6波」の勢いが止まらない。

 全国の1日の感染者数は、1月28日に8万人を突破。昨夏の「第5波」のピーク時の約2万5千人の、すでに3倍超となっている。ただ、「第5波」では最大2千人を超えた重症者数は28日時点で697人と、感染者数の割には重症者が少ないという特徴が見てとれる。

 英医学誌「ランセット」(1月19日付)に掲載された南アフリカのデータによると、オミクロン株感染者の入院率は2.4%で、デルタ株などと比べて5分の1程度で済んでいるという。

 だが、状況は決して楽観できない。米国では一時、1日の新規感染者数が100万人を超えるまでに感染が拡大。1月27日には約55万7千人まで下がったものの、死者数は直近7日間の平均で1日2千人を超える事態となっている。大阪大学名誉教授の宮坂昌之医師がこう警鐘を鳴らす。

「例えば、病原性が5分の1に下がっていても、感染者が10倍に増えたら、重症者も2倍になります。病原性が下がっているから大丈夫と言えるような状況ではない。何より、社会の中の感染者をこれ以上増やさないことが大切です。2回のワクチン接種でできたレインコートでも、たくさんの雨(コロナウイルス)は防げず、ブレークスルー感染を起こします。マスクをしっかりつけて対人距離を取るなどの日常的な対策で、雨の量を減らしてやらなければなりません」

 また、変異によってウイルスの病原性が下がっていき、今後、パンデミックが収束に向かうという「ウイルス自壊説」も聞かれる。だが、宮坂医師はこう警告する。

「これまでにウイルスの変異により感染が収まったというエビデンスなどありません。学者の中には、オミクロン株のような弱いウイルスは、むしろ感染が増えたほうが集団免疫を獲得できるからいいという人もいるが、そんなことはない。感染者が増えるほど変異の機会が増え、今後、もっと病原性の強いウイルスが現れる可能性だってある。集団免疫の獲得が不可能なのは、ワクチン接種と感染により抗体陽性者が95%を超えているロンドンやニューデリーで感染が抑えられていないことからも明らかです」

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