元JBC(日本ボクシングコミッション)事務局長で現顧問の安河内剛氏
元JBC(日本ボクシングコミッション)事務局長で現顧問の安河内剛氏

 那須川はアマチュア時代からキック界を席巻してプロに転向。15年のRISE世界バンタム級王者になって以降、多くのタイトルを獲得。RIZINのリングでは総合での試合も行っている。現RISE世界フェザー級王座であり、今年6月にK-1スーパーフェザー級王者・武尊との試合を最後にキックからボクシングに専念することを表明している。

「まずは慣れることです。キックなどの立ち技と違うのはラウンド数です。立ち技なら3か5ラウンドですがボクシングは12か15ラウンド。新人のデビュー戦が4回戦ですがこれでもキックより長い。スタミナ配分、攻め方など戦略の立て方が異なります。また身体のバランスも異なります。立ち技は足も使うので上体が立ち気味ですがボクシングは多少クラウチングします。身体に染み付いているものを修正するのは難しいことです」

「アスリートとして特出している人は適応力も高い。那須川はキック、総合などの多くの試合をこなしていたので適応力は高いはずです。ボクシング独特の駆け引きなどにアジャストできるかどうか。長いラウンドを経験して戦略や練習方法を構築することが重要。細かい部分ではジャブを有効に使う、スタミナを温存するなどを覚える。武居は現在そういった部分を勉強しているはずですし、那須川にも必ず必要になります」


~ボクシングを選択した2人の行動力は賞賛に値


 長い歴史を誇るボクシング業界だが、キックなどの他競技から転向し世界チャンプレベルまで辿り着いた選手は皆無に等しい。武居、那須川のケースで注目を集めたが、なぜ今までそういった選手が生まれてこなかったのだろうか。理由として『コンバット(=暴力行為を含む)スポーツ』を一括管理する中立公正のコミッションがないことが挙げられる。

「日本国内では大前提でキックと空手、ボクシングといった『二足のわらじ』は履けません。米国、豪州など海外では州ごとにキック、ボクシング、総合などのコンバットスポーツ全てを1つのコミッションが管轄しています。よって同じ選手が今回はK-1に出て次はボクシングに出ることも可能です。管理団体がしっかり機能しているからできることです」

「日本ではボクシングにはコミッションがあります。しかしキック、総合には健康管理、興行などを管理する独自のシステム、団体がない。興行をする際に各プロモーターは努力していますが統一的組織がない。だからボクシングをやるとなったらJBCとしては他競技との関係を1度断ち切ってもらうことになる。他の競技と並行してやることはできません。仮にボクシングを辞め、他競技に移ることはできますが、そこから再びボクシングに戻る時には審査などのハードルも高くなってしまいます」

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