キックなどの他競技からボクシング転向するのは簡単ではない。競技として全くの別物で技術、調整を含めイチから作り直さないといけない。加えて現状のルールでは前所属競技団体と1度、キッパリと別れないといけない。那須川や武居のように地位や名誉を持ちながらの決断は、それだけで賞賛に値する。
「2人の決心には感謝も大きい。他競技もそうですが特にボクシングは少子化の中で人材不足です。そこに同じコンバットスポーツから素晴らしい人材が来てくれるわけです。コンバットスポーツを選ぶ人の性格や人間性は似ています。対人競技で白熱するスポーツですからハマるタイプが似ている。だから野球などのチームスポーツよりキック、総合などをやっている人の方がボクシングに馴染みやすいと思います」
「実はボクシング界には他競技を排除していた歴史があります。昔キックが隆盛だった時期にボクシング人気が一気に下がってしまった。世論とともにテレビ局などもキックを推したのでボクサー人口が減った。それで他競技へのアレルギーが強くなったわけです。ボクシングジムにパンチを習いに来るのは内緒でないといけない状況でした。個人的には今は他競技間を行ったり来たりしても良い時代だと思います」
【後編へ続く】那須川天心は「破格のファイトマネー」ゲットも?
(文・山岡則夫)
●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。