オミクロン株の拡大で、チケットの一般販売も断念に追い込まれました。多くの市民は五輪を「自分事」として受け止められないでいます。街を包んでいるのは期待や熱気より、期間中に感染を広げるわけにはいかないという緊張感です。
米中対立を背景に、政治の色彩も強くなりそうです。米英豪などが政府要人の派遣を見送る「外交ボイコット」に踏み切りましたが、ロシアなどは要人を派遣します。米欧不在の場で、習近平国(シーチンピン)家主席が懇ろに友好国のゲストを迎える姿は、ブロック化が進む国際政治の現状を象徴することになるでしょう。
習氏はコロナ禍にうち勝って大会を成功させたとアピールするはずですが、ウイグル族をめぐる問題をはじめ中国の強権的な振る舞いへの国外の視線は厳しいものがあります。中国が語ろうとするストーリーに鼻白む国も少なくないでしょう。
新型コロナが人と人を、国際政治が国と国との分断を深めています。その現状を浮き彫りにする五輪になるのか、それとも断絶を和らげる可能性を示せるのか。大会の成否を分けるポイントではないでしょうか。
※AERA 2022年2月7日号