2014年、万引被害にあった店側が犯人とされる人物の写真をインターネット上で公開し、議論を呼んだことがあった。店側を擁護する世論もあれば、専門家からは名誉毀損(きそん)などの法的問題を指摘する声も上がった。だが、今も全国各地で店側は万引被害に悩まされており、犯人とされる写真を掲載する事例は続いている。被害が深刻化する中での正当な自衛策か、はたまた度が過ぎた違法行為なのか――改めて、弁護士に見解を聞いた。
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東京23区の、とある繁華街にあるスーパー。店内の数カ所に、商品を万引したとされる買い物中の人物の写真が掲示されている。どれも客の目にとまりそうな商品のそばに貼られており、「逃走中」などと書かれたものもある。
時節柄、写真の人物はマスクをしており表情がわかりづらく画像も鮮明ではないが、モザイク処理が施されていないものもある。
このスーパーチェーンの会社は取材に応じられないとしたが、会社関係者は、「値段の高い酒ばかりを狙ったりと、転売目的が疑われる悪質な万引が目立つ。しかも何度も繰り返しますからね」と話す。
関西のあるトレーディングカード店は昨年末、ツイッターに万引したとされる人物の写真をアップ。顔にモザイクをかけた形で、期限までに商品を返却しなければモザイクを外すと“警告”した。
店側は「とにかく商品を返してほしいという一心でした。額は言えませんが、万引被害はこれまでもありますから」と胸中を明かす。
この人物は同業者の間で「万引疑い」の注意が共有されていたそうで、「店員が別のお客さんを接客し、(この人物から)目を離している短い時間に商品がなくなっていました。すぐに防犯カメラの映像をチェックし、間違いなく(この人物が)盗んだと確認できました」
SNSでは一部批判もあったというが、多くは肯定的な意見だった。常連客らも、店が悪く言われていないか心配して声をかけてきたという。