2月3日の時点で商品の返却はない。警告した期限は過ぎているが、モザイクは外していない。

「常習だったのだろうと思いますが、これで、(加害者とされる人物は)うちを含めこの周辺の店には来られなくなるでしょう。他の万引犯も、写真を公開されるのが怖くて盗めなくなると思います。法律の問題もニュースなどで聞いたことはありますが、僕らだって好きでやったわけではない。被害が減って、もうこんなことをやらなくて済むようになるといいですよね」

 店にとって、万引被害は経営を左右するほど深刻なケースもある。大阪のある鮮魚店では、万引を認めた人の写真を店内に貼りだしており、現在も3人の写真が掲示されているという。1万円の「罰金」を払えば貼りだしはされず、また、万引を知らせてくれた客には、罰金の1万円を提供するとしている。賛否はあるが、掲示を開始して以降、被害は減っており抑止効果はあるようだ。

 店側が万引犯の写真を公開した事例で有名になったのが、2014年の古物商「まんだらけ」の一件だろう。高額なフィギュアを万引した人物について、目にモザイクを入れた写真をネットで公開。返却しなければモザイクなしの画像を公開すると警告した。「悪いことをしたのだから当然」「やり過ぎ」など、まんだらけには賛否両方の意見が寄せられたが、警視庁から「捜査に支障が出る恐れがある」と注意され掲載を取りやめた。最終的に、その人物は逮捕された。

 その後、全国各地の店で同様の事例が相次いで報じられた。専門家らは刑事・民事上の「名誉毀損」の可能性や、憲法の「私刑の禁止」などに触れ、店側に否定的な見解が目立った。

 それでも続く、万引したとされる人物の写真公開。こうした問題に詳しい長谷川裕雅弁護士(永田町法律税務事務所)によると、名誉毀損やプライバシー侵害に当たるかは、社会に警鐘を鳴らすなどの「公共性・公益性」の有無などが焦点になるという。ただ、その点はケース・バイ・ケースで判断されるため、白黒の線引きは難しい。

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「法律」と「感情」の隔たり