バイオリニストの廣津留すみれさん(28)は、学問の名門ハーバード大学と、世界最高峰の音楽大学の一つであるジュリアード音楽院を卒業したという異色の経歴の持ち主。ハーバード大在学中に出会った世界的チェリストのヨーヨー・マとは度々共演し、The Knightsのメンバーとしてギル・シャハムと録音した最新アルバムは、今年のグラミー賞にノミネートされている。廣津留さんの頭の中を探るべく、どんなふうに音楽や勉強とかかわってきたのかを語ってもらうAERA dot.の新連載。第1回は、子どものころからの音楽の話について。
【写真】14歳のころ、バイオリンのコンサートに出場した廣津留さん
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バイオリンを始めたのは2歳の終わりです。大の音楽好きの両親によれば、ハイハイをし始めるのが早く、運動神経がいいから楽器もいけるのではと思って習わせたと聞いています。大分市に住んでいた私の周りには、同じ年代でバイオリンを習っている仲間がいなかったので、小学校3年生で初めてコンクールに出場するまで、自分がどのレベルにいるのかが分かりませんでした。
■コンクール前は「私マジでダメだな……」と落ち込んだ
そんな中で唯一、具体的な目標になったのは、家にあった“巨匠のCD”だったんです。同じ曲を別の巨匠クラスの演奏家が弾いているCDを聴き比べて、この人のような演奏をしたいなと思うしか指針がなくて。今になって考えれば、ありえない高みを目指していたんだなと思いますね(笑)
初めてのコンクールへ向かう車の中では「ああ、まだあの演奏のレベルに届いていない。私マジでダメだな」と落ち込みましたね。でも会場に行ってみたら、「あれ? あのCDのように完璧に弾ける人っていないの?」と驚いたのが素直な感想でした。当時は本当に無知でしたから。少しくらい音程を外しても大丈夫なのかなと、正直安心しました。楽器を弾く同じ年代の人に初めて会ったことで、ようやく自分のいる位置や直すべき課題が見つかった気がします。