2016年11月20日、全日本ジュニアの男子フリーの演技を終えた鍵山優真
2016年11月20日、全日本ジュニアの男子フリーの演技を終えた鍵山優真

 一気に存在感を増した陰には、コーチを務める父、正和氏の戦略がある。自身もアルベールビル・リレハンメルと2度の五輪代表を経験している正和氏は、まず徹底してスケーティング技術の基礎を鍵山に教え込んだ。現在のロシア女子が身体の軽いうちに4回転などの高難度ジャンプを叩き込むのと比べると、対照的なメソッドと言える。

 ぶれの無いスケーティング技術を身に着けた鍵山は、確かな基礎を踏み台に4回転ジャンプを着々と習得中だ。土台が正確であるが故に、一度手に入れた技の精度は高い。8日のSPで跳んだ4回転サルコウは、4.02点の加点をもぎ取った。団体戦フリーで初めて構成に組み込んだ4回転ループでも、0.6点の加点を得ている。

 憧れは、宇野昌磨とネイサン・チェン。真似のしようがない羽生結弦では無く、「極上」と称されるスケーティング技術を持つ宇野や、お手本のような四回転ジャンプを跳ぶネイサンの名を挙げる辺りにも、鍵山父子の目指すところが透けて見える。SP後には、憧れの2選手と共に記者会見場に着席し、初々しく緊張しながらも笑みをこぼした。

 恐ろしいほどの成長曲線を描いてなお高みを目指す鍵山優真。キス&クライで高得点に喜ぶ様子は天真爛漫で愛らしいが、演技後のインタビューでは「順位の事は気にせず、自分のやるべきことをやるだけ」と、浮ついた様子は一切伺わせなかった。

 フリーに進出した24名中、12人がSPで90点台を超える大激戦となった北京五輪。メダルの行方ももちろん気になるが、飛躍を続ける駿馬がこの大舞台でどこまで伸びやかに駆けていくかにも注目したい。(本誌・菱守葵)

※週刊朝日オンライン限定記事

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