なぜなら、彼が2000年代に日本のエースとして君臨した時に得た財産、そして引退までの10年代に味わったリハビリの知識というものは、他の追随を許さないからだ。彼が声高に意見を言わなければ、その経験値は球界に浸透していかない。広島では、昨季の最多勝右腕の九里亜蓮からスライダーの握りを聞かれたという。そういった時には、どんどん自らの知識を伝えてもらいたい。
知識の出し惜しみなどする必要はない。なぜなら野球界は5年、10年で大きく変わるからだ。大輔の持つ知識がいつまでもアップデートしなければ、それは古い考えとなってしまう。今年はテレビ各局のスポーツニュースも若き野球評論家がキャスターになった。今求められているのは、そういった最先端の野球の考え方だ。
日本ハムの新庄剛志監督もテレビのニュースなどで、報道陣にのどあめ、昼食のカレーの差し入れなどが話題になっていた。第1クールはそれでいい。新庄監督が狙っているかはわからないが、自らに報道陣の目を向けさせることで、選手は練習に集中できる。話題のためだけの奇抜な練習は秋と違って春は必要ない。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2022年2月18日号