西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、評論家に転身した松坂大輔氏にアドバイスを送る。
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2月に入って一気にスポーツ界がにぎやかになった。4日に開会式を迎えた北京五輪。そしてプロ野球も2月1日に12球団でキャンプインした。
私が西武監督時代のドラフトで入団した松坂大輔が評論家として1日に西武と広島、2日にはソフトバンクのキャンプ視察に行った。大輔にとって評論家1年目で、12球団のキャンプで何が行われているか、変わらない部分と、独自色が出ている部分、時間配分などメニューを知るだけでも違う。私との話の中でも「将来指導者になるにしても、しっかり野球というものを外から勉強しなきゃいけない」と話していた。彼なら、12球団どこに行っても、顔を知っている選手や、侍ジャパンで一緒にプレーした選手がフロントやコーチにいるはず。わからないことや、その練習意図に疑問を持った時などは、どんどん聞けばいい。
今の監督、コーチに求められるのは、コーチングをする上での引き出し。どの社会でも幹部の人ならわかると思うが、今の若者は理不尽だと感じるものはやらないが、納得するものは真面目にやるといった者が多い。若者の心に寄り添えるかどうかは、その選手に合った考えを提供できるかどうか。そのためには、自分にわからないことを野球界、そしてスポーツ界全体に幅を広げ、知識を得るしかない。
大輔が入団した時は、昭和の時代の評論家もうるさく、いろいろな評論家の話を聞いたフリだけして、自分の中で情報の取捨選択をしていたと思う。私も監督だったが、長期的なビジョンの中で助言しただけで、短期的な修正などに口うるさく言った覚えはない。だが、今はそういった取捨選択をできる若い選手がどれだけいるかはわからない。ただ、大輔には「自分が評論家からいろいろと言われたことが嫌だから自分は言わない」とはなってほしくない。